トンチンカンと邪悪

 車に乗ってカー・ラジオのスイッチを入れると、東京FMが入ってきました。その日はなんと国会中継。いつもならお気に入りのCDに切り替えてしまうのですが、聞き覚えのある辻元清美議員の「総理!」という声が聞こえてきて、懐かしくついそのまま国会ライブに聞き入ってしまいました。要は「総理、認めるのか、認めないのか答えてください」と辻元さんが迫っているので、時間の短縮と分かりやすさを考えれば、岸田総理大臣の答えは、「認めます」あるいは「認めることはできません」「認めません」の一言で済むはずなのですが、答える方の総理は、先ほど申し上げたようになんとか、かんとか、えー、ぐずぐず、という塩梅で要点をずらし、はっきり答えようとしません。要するに即答を避け、曖昧にしぼやかして、意味不明の答えにしようとする。二人の対話は噛み合わず、辻元議員が何度も同じ質問をするのに、少しも真相は明らかにならない。辻元さんは歴代の総理大臣と渡り合い、その折の「総理!総理!」という呼びかけが有名だった野党の代表選手ともいうべき存在です。しかしそのために大阪の地元では「第二自民党」と自らを称する「維新の会」に徹底的にマークされ集中攻撃を仕掛けられて衆議院選挙で敗北し、先の参議院選挙で返り咲きました。しかし大阪の庶民を代表する辻元さんのストレートでラフな物言いと、相手に尻尾を掴まれないよう、言質を取られ無いよう、あるいは一国の総理大臣としての国会言葉なのかは分かりませんが官僚的な岸田総理との会話は、実は言葉そのものの質が良くも悪くも全くの別物で、噛み合わない外国語のようです。つまり言語が違うのです。

 ガザとイスラエルの戦闘を報道するTVの報道番組では、スタジオの司会者も解説するゲストの専門家も現地に入り現況をリポートする記者たちも、一様に爆撃や被害の様子、武器の程度やこれからの展開を予想します。が、戦争を終わらせるためにはどのような提案、対策があるか、誰がどのように動いているか、またそもそもどういう訳でこのような事態になったかを説明・追求する番組は極めて少ない。

 北朝鮮がミサイル実験をしたと聞くと、「けしからん」と抗議の報道はしても、そもそも一つの国であった朝鮮半島が戦争で南北に分かれ、今はその休戦状態にあるのだから、北朝鮮の武器の開発と戦闘準備を根本的にやめさせようとするなら、停戦状態にある朝鮮戦争を終結させて恒久平和を実現するということが筋というものです。が、韓国の文在寅大統領が南北首脳とトランプを引き合わせて平和交渉に持ち込もうとした時、慌てふためいてアメリカを止め、南北対話に反対し妨害したのは、故・安倍晋三首相でした。後を継いだ岸田首相は、ハッキリと朝鮮戦争の終結は時期早尚と言い切りました。驚きました。戦争は一日も早く終わるのが良いはずに決まっているのでは? 終戦が時期早尚というのは、まだもう少し殺し合いを継続せよ、とでも言うのでしょうか?弱小国・北朝鮮に対して、まるで挑発・脅しのように世界1、2位の軍事力をもつ「日米韓」が共同で「軍事演習」をするのですから、北朝鮮がナーバスになり、ミサイルを飛ばし核を開発しようとするのは当然のことと言えます。日本国はアメリカの核の傘の下に入って核の抑止力を認め、「核拡散禁止条例」に署名もしないのですから、自己矛盾も良いところ。シュールな冗談としか思えません。わたし達はもう少しまともなはずなのですが、トンチンカンな言説にやすやすと騙され、考えることも疑うこともしません。何千、何万と犠牲となっていく人の命など金儲けのためにはなんとも思わない、むしろ利益のためには憎悪と対立を煽ってやまないという邪悪な意思は、どこかで戦争が始まると戦争を止める議論ではなく、嬉々としてどこそこの国が武器を供給した、足りなかった武器はこれくらい補強された、これでどこそこが優勢になったなどと、TVなどで堂々とまるでゲームのように結果を予想をしてばかりです。邪悪な意思は、トンチンカンな人々と相性が良いようです。

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