人柄と「政治的信条」

 人間というのは、実に複雑だ。損するとわかっているのにしてしまう。騙されているかも、と思いながら「No」が言えずにずるずると深みにはまってしまう。しかし、だからそれがAIや機械とは違う人間だ。(21日、韓国でドジャーズの大谷翔平と初対戦したバドレスのダルビッシュ有は、新婚でもある親しい後輩・大谷翔平に打たれてしまったにもかかわらず、ゲームでは「情」は関係ないと言いつつ、も心の中で思わず「ニコッ」としてしまう)

偶然に、今国民から人としての倫理観と道徳が厳しく問われている自民党の裏金問題に絡んで、さまざまな人々の政治的発言をリサーチをしている中で、「伊藤よ、アメリカの政治を語る前に、あなたの姉はどうなのだ?」という一行を見つけ、わたしは伊藤貫という高名な政治学者が自民党・山谷えり子氏の弟であることを初めて知った。
山谷えり子氏の父は、わたしも好感を持っていたリベラルなジャーナリストだったので、彼女が民社党から民主党へ、さらには保守新党を経て自民党へと180度以上の転身をし、現在では自民党の中でも最右翼とも思われる強硬な主張をするようになっているのには驚いた。主義主張は変化して当然ではあるけれども、ここまでの変化をされると失望を通り越して何があったのかと訝しく、少なくともわたしは人としてのそのあまりの変節ぶりに驚いた。

 家族だからといって同じ思想とは限らない。むしろ肉親だからこそ、激しく対立する場合も多い。とにかく私はにわかに伊藤貫という71歳でボストン在住という学者に興味を抱き、主に動画などで彼の主張と人柄に触れるに、「核武装論」を除いては実に共感するところが多く、アメリカの事情などに関しても日本の新聞・テレビの報道などは薄っぺらいデマゴーグか、専門家と称する人々の知ったかぶりに過ぎないということを改めて確信するにいたった。伊藤貫という人はじつに飾り気なく正直で率直、そして面白く温かい人に思われた。
  彼は、日本ではあまり私がしっくりはこないABEMA・TV「日本文化チャンネル桜」などにも出演し、相手が誰であれ態度を変えず拒まず柔軟でありながら、話す内容の分析は正鵠を得てあまりに邪心なく正直であるために、真逆の思想に思える人たちも全面的に納得せずにはいられない。アメリカのメディアが富豪たちの走狗となって信用できないか、さらにはそれをそのまま真似をして垂れ流す日本のメディアが信用できないかを軽やかに、熱をもって語り、歴代大統領の中でも最も邪悪で人間的に冷たいのはオバマとヒラリーであると言い切った。さらには、ブッシュ(息子)をはじめとする米国の政治家が1995年以降、他国の政治に不必要に介入して紛争を引き起こし300万人以上の人命が犠牲にしたのに比べれば、少なくとも人殺しに躊躇するバイデンや、そもそも戦争が嫌いなトランプの方に好感を抱くという。300万人といえば、第二次世界大戦で日本が犠牲にした自国民310万人とほぼ同じ人数の命。

 伊藤氏は、前回はバーニー・サンダースを応援し、今秋の大統領選ではロバート・F・ケネディJrを推しているという。ついでに言えばロバート・F・ケネディJrの偉大なる叔父と父を殺害したのはCIAとFBI、ペンタゴンであると背景を明快に解説する。これまで、あちらこちらの情報をつまみ食いし大よそは判ったつもりになっていた私にも伊藤氏の伝えるさまざまな情報は全く別次元のものであって、殺されたケネディ大統領の生々しい震え声と無念が、ふと生々しく耳元に聞こえたような気がして、アメリカという超大国の恐ろしさがひしひしと身に感じられたものである。これでは38度戦を挟んで70数年間、戦争を終結することも叶わず日米韓と神経戦を強いられている弱小国・北朝鮮が「核武装」に追いやられたの、もむべなるかなと思いつつ、だからこそ歴史的にあまりにもしばしば外勢に侵略され、戦火に逃げ惑い呻吟してきた無辜の人々の命を、二度と再びこの朝鮮半島の地で犠牲にしてはならないという切実な熱い想いに、改めて衝かれた。

 

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